和希と一緒にいると、悔しいのだ。

お風呂あがりに濡れている髪をタオルで拭かれたりとか、頭がよくて俺にいつも勉強教えてくれたりとか。
たまに見せる、とても大人びた表情とか。

悔しい。悔しいのだ。
俺に対して優しくしてくれるのはとても嬉しい。
俺のことを思ってくれるのもとても嬉しい。
本当の年が大人なのだから、大人びた表情っていうのは違うかもしれないけれど。

だけど、そういうものを見せられているときに、和希は大人だって、改めて感じさせられるんだ。
…実際そうなんだけど。

「しょうがないだろ?実際俺は啓太より年上なんだし」
「わかってるけどー」
思っていることを口にしたら、和希は少し驚いたあと、笑いながら言った。
なんだよ、笑うなよ。俺は真剣に考えてるんだぞ。
和希を睨みつけたら、和希は口元を手で覆った。
…笑ってるだろ。思いっきり笑いたいのを堪えてるんだろ、お前。

「わかった。悪かったって啓太。ごめんごめん」
「誠意が感じられませんー」
「ほんとに悪いと思ってるって。だから拗ねるなよ」
「拗ねてない」
「拗ねてるだろ」
「拗ねてないってば!」

…分ってるんだ。
何が悔しいって、和希は大人なのに、俺が子供なこと。
和希が悪いんじゃない。
ただ大人な和希と一緒にいると、自分の子供の部分が丸見えになって、悔しいんだ。

「…和希は、ずるいよ」
「…仕方ないだろ?年上なんだし」
先ほど言った言葉をもう一度呟けば、先ほどと同じ答えが返ってきた。
わかってるよ。この間まで友達だった和希は、今ではカズ兄であり理事長である。
俺なんかよりも年上で、頭もよくて、面倒見もよくて、頼りになる。
対等だと思っていたのに、今ではずいぶん和希は遠い人になってしまったみたいだ。

「…寂しそうな顔するなよ」
「遠くなんかないよ。そんなこと言うなよ、啓太」
そう言う和希は、ほんの少し、泣きそうで。

「ごめん」
「啓太は、俺のことそういう風に思ってたんだ」
「別に遠くにいるなんて思ってないよ」
「遠くに感じるって言ったじゃないか」
「まぁだけどやっぱり和希は大人で俺は子供だよなぁとは思う」
「仕方ないだろ実際俺の方が年上なんだから」
「だけど悔しいんだよ」
「俺はそんなこと思われてることが悔しいよ。年なんか、関係ないだろ?」

そりゃあ、和希が何歳だって、俺はかまわないけれど。
…というか、実際俺は和希年を知らないのだ。

「…まぁ、気にするなよ」
「何だよ、別に教えてくれたっていいだろ?」
「俺が何歳でもいいって言ってくれたじゃないか」
「そうだけど。気になるものは気になるんだよ」
「気にするなって!細かいこと気にしてたら大きくなれないぞ!」
「また子供扱いする!というか細かくないし!ここは明確にさせておかなきゃ駄目なところだろ!?」
「気にするなって」
「気になる!」

俺のことなんでも知ってるくせに、和希のことを俺が知らないなんて、悔しいじゃないか。

やっぱり和希と一緒にいると、悔しいのだ。




『それでも一緒にいたいと思うなんて、おかしいだろ?』




―――――――
どっちもどっちなお話。
始めてみたものの終わりが見えないので終わらせてみました。(爆死