新年を祝って皆が騒いでいる中で、お祝いどころではない人がいた。 頬を膨らませて怒る女の子とその女の子に頭をさげている男の子。 『年越しの仕方』 「信じられないっ!」 腕を組んで、目の前で頭をさげている男の子に目を向けず、頬を膨らませた少女が叫んだ。 「だからごめんってば!」 先ほどから精一杯頭を下げているのだが、それでも許してもらえず少年は少し慌てているようで。 「『カウントダウンは一緒にしようね』とか言ってたのはどなたかしら?」 「う゛っ!」 とげを含んで言うハーマイオニーの言葉にロンは思わず言葉を詰まらせる。 「大晦日だから浮かれてフレッドとジョージたちと騒いで疲れて寝ました?」 「いや・・その・・・」 朝起きて彼女に言った言い訳を要約されて我ながら馬鹿だなと思いながら、なんとか言葉を繕おうとするがなかなかいい言葉が浮かんでこなくて。 「前日で浮かれてどうするのよ」 「だって・・っ!!」 少しムッとして言い返そうとしたが、思わず浮かんできた言葉をなんとか引っ込めた。 ――ハーマイオニーと一緒に祝えるから浮かれてた なんて本人に言えるわけもなく。 「・・・だって?」 睨みながらロンに視線を向けるハーマイオニー。そんな視線を感じてまたロンは身を竦ませる。 「・・・・ごめんなさいっ!」 とっさに再び頭を下げた。 約束をすっぽかした自分がいけないのだ。 浮かれて疲れたなど、自分がいけないのだ。 ハーマイオニーには謝ることしか出来る事が無い。 「本当ごめんなさいっ!」 謝って許されるようなことじゃないけど、謝らずにはいれなくて。 頭上からはぁと息を吐き出す音がして。 恐る恐る頭を上げたら、ハーマイオニーが苦笑するように、だけどどこか嬉しそうに笑っていた。 「いいわよ、別に」 特別にバタービール奢ってくれたら許してあげるわ なんて付け足しながら言われた言葉にロンは驚いたがすぐさま頭を縦に振った。 「うんうん!バタービールでもなんでも奢るよ!!」 笑顔で言うロンを見て、ハーマイオニーは噴出して思わず笑い出した。 「な・・なんだよ・・?」 いきなりのことにロンは驚いて。 「何でも・・ないわよ・・」 笑いながら言われも。 そう思いながら不思議そうにハーマイオニーを見ていたら、笑うのをやめて彼女は笑顔を浮かべて言った。 「あけましておめでとう」 「・・・おめでとう」 つられてロンも笑顔で返した。 今年も、よろしくね? 「寝た!?」 親友の口から出てきた言葉に驚いて思わず叫んでしまった。 咄嗟に口を覆い、辺りを見回して周りの注意がこっちにきていないか確かめた。 幸い年越しだからだろう。浮かれている皆には自分の叫び声など聞こえていないようで。 そんな自分の行動に親友は苦笑して答えた。 「うん。今日フレッドとジョージたちとかなり騒いでたからね。多分疲れたんじゃないかな?」 その言葉にハーマイオニーは肩を落とすしかなかった。 「・・・何なのよ」 『カウントダウン一緒にいない?』と少し頬を紅く染めながら言ってきた彼に、思わず自分を頬を染めて返したのは一週間前。 楽しみにしていたのに。新年を彼と一緒に迎えられると思うと、嬉しくてしょうがなかったのに。 寝るときますか。 溜息をついて心の中で悪態をつく。 「今部屋にロンだけだし、行ってきたら?当分誰も戻らないと思うよ?」 悪戯っぽく笑いながら彼は男子寮への階段を指差して。 「・・・そうね。お邪魔させてもらおうかしら・・」 せめて今年の最後くらい。彼の顔を見ておきたいから。 歩き出した背中に親友のクックッと殺そうとしたのだけど、出てきたのであろう笑い声を聞いて思わず振り返って。 私の態度が面白かったんでしょう!?怒ってるのに行くのが面白いんでしょう!? 「顔見るだけですからね!!」 指差しながらそう叫んでその場を去った。 可愛いなぁなんて呟きは無視することにする。 どうせ素直じゃないですよっ。子供っぽいですよっ。 「何なのよ・・」 彼の寝顔を見て呟く。 「幸せそうな顔して寝ちゃって」 自分はこんなやるせない思いでいっぱいなのに、と少し悔しくて。 彼の頬を突いてみた。 すると彼が少し身じろいで、慌てて手を引っ込める。 ・・・お・・起こしちゃったかしら・・っ!? 慌てて彼の顔を凝視しても彼はまた規則正しい呼吸を始めて。 「ハー・・・マイ・・ニー・・」 彼の口から出てきた言葉にビクついた。 いきなり喋りだしたことと、それが自分の名前であることにとても驚いたのだ。 多分寝言なのだろう。まさか寝言で自分の名前を呼んでくれるとは。 さっきまでの怒りがどこからいったように薄れて。 「・・何よ・・」 呆れながら、だけど笑いながら呟く。 「・・・・お・・・めで・・とぉ・・・」 たどたどしく言われた言葉にまた驚いて。 まさか寝言で祝われるとは思ってなかったわよ 溜息をついて。だけど、嬉しくて。 チラっと時計を見るといつの間にか0時を過ぎていて。 「新年が寝言で始まるなんてね・・・」 だけどまぁ、いいか。 なんて思えるのは、夢でまで彼が私と祝ってくれたとか、あまりにも寝顔が嬉しそうだからだろう。 やっぱりどこかロンには甘いのよね。 「・・・おめでとう。ロン」 微笑みながら彼に言った。 今年も、よろしくね。 ―――――――― こんなハリーが大好きです。(ぇ? 本心は怒ってないんだけど、とりあえず文句の一つや二つ言わせなさいってことで最初のハーマイオニーさんの態度です。 |