レポート提出期限まで、あと2日。

そろそろ提出だな、と思って少しずつやってはいたけど。
なかなか終わらない。
理由はわかっている。僕がのろまな所為。
要領が悪いから。本に書いてあることを理解するまでに人の3倍はかかるから。

はぁ、と溜息をつきながら、本のページを捲った。
「ピーターじゃん」
頭上から声がして、顔をあげる。

「シリウス。どうしたの?本でも借りに来たの?」
彼の傍にはいつもジェームズがいるのに、今はいない。
シリウスが一人でいることに疑問を感じて問いかける。

「オレもそろそろレポートしなきゃやばいと思って」
苦い顔してシリウスは言った。

珍しい。
「シリウスがまだレポート仕上げてないなんて珍しいね。いつもはあんなに早くにやっておくのに」
いつものシリウスは、一体いつの間にレポートを書いていたのか問いかけたいくらいに、早めに片付けておくのに。
こんなぎりぎりになるまでやらないなんて、珍しい。

「…最近ジェームズと悪戯ばっかりしてたから」
「…そのジェームズは?」
「いつの間にか終わらせてた」
いつも一緒にいたはずなのに、あいついつやってたんだよ、とぶつぶつ言うシリウスに、僕は納得がいって、少し笑った。
シリウスらしい理由が、面白くて。そして微笑ましい。

ジェームズとシリウスは、僕の憧れだ。
2人が仲がいいのは、とても嬉しいこと。

「ここ、いいか?」
先ほどまでジェームズにぶつぶつと文句を言っていたシリウスが、僕の目の前の席の椅子を指しながら問いかけた。
「どうぞ」
笑顔で、答えた。



シリウスの集中力は、凄いと思う。
僕の前の席に腰を下ろして、レポートに取り掛かってから結構時間が経つのに、シリウスは変わらずに黙々と書き続けている。
僕なんて、疲れてしまって、なかなか集中出来ていないというのに。

疲れたから少し休憩、と、身体を伸ばした。
そして頬杖をついて、思わずシリウスに見入ってしまう。

いつもはジェームズと無邪気に笑って悪戯しているのに、こんな真剣な顔をするなんて。
奇麗な顔だなぁとしみじみ思う。
この顔ならモテるのも無理はないよなぁ。
本人は迷惑してるらしいけれど。
ああ、少し長い髪が鬱陶しそう。
それなら面倒くさがらずに切ればいいのに、と苦笑する。

しばらく、ぼーっとシリウスを見ていた。

「んー!終わり!」
そう言って身体を伸ばしたシリウスに驚いた。

「え!?もう!?」
「おう!ばっちり仕上げたぜ!」
「は、早いよ……」
笑顔を向けられて、僕は戸惑うばかり。

僕が何日もかけても終わらないものをシリウスはこの数時間でやる遂げてしまったというのか。

「……僕なんてまだ終わりそうにないのに…」

なんでこんなにも彼と僕は違うのだろう。
うさぎとかめな僕らの違い。
うさぎとかめの方がまだいいかもしれない。かめは頑張ってうさぎに勝利したけれど、それはうさぎがさぼっていたから。
このシリウスが、そんなことをするはずがない。

本来のスピードで進んでいくうさぎに、かめの僕が追いつけるはずがないんだよ。

憧れているのに。
こういう風になれたらと、思っているのに。


俯いてしまった僕を見て、だけどシリウスはすぐに片付けを開始した。
荷物を纏めて、寮に帰るのかと思ったけれど。

「……帰らないの?」
荷物を纏めて机の端に寄せて、そのまま椅子に座っているシリウスに問いかける。
シリウスは面白そうな本はないかと、手近にある本を掴んでいた。

「お前が終わるまで付き合ってやるよ。頑張れよ、ちゃんと終わるから、そんな落ち込むなって」

僕が落ち込んでいるのは、レポートが終わらないからだと思っているのだろう。
本当はレポートよりも、シリウスとの違いに落ち込んでいたのだけど。

だけど。

「ありがとう」

嬉しくて、涙が出そうだよ。


うさぎとかめな僕ら。
うさぎのスピードにかめの僕はついていけないけど、うさぎは、シリウスは僕を待ってくれている。

頑張ってついていこう。かめな僕だけど、精一杯歩いて、うさぎの隣に立てるように。
いつか一緒に、歩けるように。








うさぎとかめ






――――――――
ピーターとシリウス。初ピーター。む、難しい…。

ハリポタ映画炎のゴブレット公開まであと2日♪