『許して?』 「悪かったって」 「……」 「僕が全面的に悪かった!だから許して!」 「…………」 「シリウスー」 我ながら、情けない声を出してしまった。だけど、無意識にそんな声を出してしまうほど、今の僕はいっぱいいっぱい。 ちょっとした悪ふざけだったのだ。いつものように、笑いあって終わるはずだったのに。 虫の居所が悪かったのか、流石に今日のはやりすぎたのか。 悪戯に引っかかってくれた親友、シリウスは、先ほどから僕を見てくれず、口をきいてもくれない。 「すいませんでしたっ!僕が悪かったってば」 「………」 「シリウスは、どうしたら許してくれるんですか?」 ベッドの上に座り込んで、背中を向けている親友に語りかけてどれくらいの時間がたっただろうか。 同室の2人は、大分昔に関わらない方が良いと判断したのか、部屋から出て行ってしまっている。 …薄情ものめ。少しは助けてくれてもいいじゃないか。 「お菓子一週間分あげるからー」 …シリウスは甘いの好きじゃないんだっけ。 「宿題一週間やってあげるからー」 …僕が言う前に、君は自分で全部片付けてしまうよね。 「うーんうーん。…どうして欲しい?」 思いつかなくて、問いかけてしまう。 我ながら情けない。 こうしてみると、シリウスは一体何が嬉しいのかよくわからない。 プレゼントをあげるにしても、甘いものは嫌いだし。 アクセサリーなんてつけないし。本は読むけど、買うより借りる派だし。 「一週間あの部屋に入ってくるな」 あの部屋とは、僕とシリウスしか知らない。2人だけの場所。 「え!?何で!?」 口をきいてくれたことは嬉しかったけど、中身は全然喜ばしいことではない。 「静かに寝る場所探してるんだよ。あそこなら誰もこないし」 「酷いよ、シリウス!あそこは僕と君の愛の巣じゃないか!!」 「……人が寝てる最中に、悪戯なんか仕掛けてくる奴がいないなら、オレも別にこんなことは言わないんだけどな」 「本当申し訳なかったです」 ここは頭を下げるしかない。 「もう2度としませんから!だからそれだけはご勘弁を…っ!」 折角2人きりになれる場所なのに、一週間立ち入り禁止はきつい。 すいませんとごめんなさいを繰り返して、ひたすら頭を下げる。 シリウスはそんな僕を横目で見て、溜息をついた。 そして僕のほうを向いて。 「わかったよ。いいよ、今回は。今度したらもう許さねぇけど」 「……っ!!わかった!もう2度しないよ!誓うよ!!絶対しない!!」 「わかったから、抱きつくなって」 そう言いながら苦笑する貴方が愛おしい。 やっと顔を見せてくれたことが、嬉しくて。 今まではずっと怒った表情だったから、それを崩してくれることも、嬉しい。 「本当に、2度目はないからな!」 ちょっと真剣な顔を繕ってみても、やっぱり笑っているシリウスにつられて、僕も笑い返す。 「シリウスが嫌なことは、もうしないよ」 やっぱり、君の笑顔が一番好きだから。 ―――――――― 表はジェームズが主導権握ってるんだけど、本当はシリウスが握ってるんです。 |