『夕焼けに照らされて』 涼しい風が吹き抜ける木陰に、彼はいた。 規則正しい呼吸。閉じられている瞳。 多分彼は寝ているのだろう。近づいても、何の反応も見られない。 風に靡く黒い髪が美しくて。 子供のように気持ちよく寝ている顔が可愛らしい。 思わず彼に手を伸ばす。 私が触れたいのは頬?髪の毛?何所だかわからないけれど、私の右手は彼に向かって伸びていく。 「何してるんだい?」 後ろからかけられた言葉に思わずビクっと肩を震わせてしまう。そしてその勢いで、伸ばしていた右手も思わず引っ込めていた。左手で、自分の右手を握り締める。 「…ポッター…」 ゆっくりと、声を掛けてきた人物に振り向く。 嫌な人に、逢ってしまった。 私はこのジェームズ・ポッターが苦手だ。苦手どころか、嫌いと言い切れる。 「…寝込みを襲おうなんて、大胆だね」 彼はいつもの笑顔を私に向けているけれど、目だけは笑っていない。 彼に近づくものは許せないのかしら。 「別に。私は何もしてないわよ」 「…じゃあ何をしようとしていたんだい?」 「あなたには関係ないでしょう?」 何をしようとしていた、なんて、私にはわからない。 彼があまりにも愛おしくて、思わず手が伸びてしまったのだ。 その後何をしようとしていたなんて、自分自身、よくわからない。 「……キスしようとしてる風に見えたんだけどね」 彼の言葉に心から驚く。私は無意識に、そんなことをしようとしていたのか。 涼しい風が、通り抜けた。 私の赤みがかった髪とポッターのくせっ毛と彼の黒い髪と木の葉が僅かに靡く。 驚いている、なんて気づかれないように、少し乱れた髪の毛を耳にかけながら私は冷たく笑った。 「あら、そんな風に見えてしまったのかしら?」 「実際は違うのかい?」 彼の瞳は相変わらず冷たい。 どうして私に向けられるポッターの瞳はこんなにも冷たいのかしら? 彼に向ける瞳は温かさでいっぱいなのに。 何故か心が痛む。 何でかしら?いつも彼と一緒にいられるポッターが羨ましいから? 彼と一緒に笑いあってるポッターが羨ましいから? …温かい瞳を受けることが出来る、彼が羨ましいから? 「さぁ?どうなのかしらね?」 冷たく笑うことでしか自分を保てない。 立ち去ろうと彼に背を向けたまま歩き出す。ポッターの横を通り過ぎるときに、ポッターは軽く笑った。 「相変わらず、つれないね」 そんな笑顔で、何故かほっとしてしまうのは何故なのかしら? だけど同時に泣きたくなる。 思わず立ち止まってしまった私なんか気にもかけずに、ポッターは彼の元に向かう。 「…シリウス、起きなよ。風邪ひくよ」 軽く揺すれば彼が起きたのか、少し不機嫌そうな声。 「んだよ…。」 「だから、もう朝ですよー。いや、実際は夕日が沈みそうなんだけどね」 「…眠い」 そう答えてまた眠りにつこうとする彼に、ポッターは苦笑を浮かべながらまた軽く揺する。 このまま寝かせるわけにも行かない。だけど寝かせといてあげたいという気持ちが入り混じって、あまり強くは起こせないのだろう。 規則正しい呼吸がまた聞こえ始める。 「…私、」 「うん?」 彼らには背を向けたまま。両手を力強く握り締める。 ポッターは彼の顔を覗き込みながら、軽く返事をする。 「……好きなのよ」 そう呟くように吐き捨てる。 好きなんて気持ち、知りたくも無かったのに。 「……うん。知ってる」 涼しい風が、また通り抜ける。 「僕も、好きだよ」 風に少し掻き消されながらも届いた言葉に、思わず泣きそうになるのをぐっと堪える。 私が好きなのは彼?それともポッター? ポッターが好きなのは彼?それとも私? わからないけど、彼の言葉が嬉しくて、切なかった。 ―――――――― 結論的に誰が好きなんでしょうか。(笑/ぇ ジェシリ&リリ→シリを書こうとしたんですが何故かジェリリに思いっきり転びそうになって、慌てて方向転換したら中途半端に曲がってしまいました。 えと…。ジェシリでありリリシリでありジェリリです。(何 |