「シーリウスっ!」
「わっ…なんだよ、リリー」
談話室でソファに座って本を読んでいるシリウスに、後ろから抱きついた。
最初は驚いた様子を見せた彼だったか、私だとわかるとすぐに落ち着きいつも通り微笑んでくれる。
シリウスは読んでいた本を閉じて、ソファの脇に置いた。
彼が本よりも私を優先してくれたことが嬉しくて、私はより一層笑いながら抱きつく腕に力を込めて、彼の顔のすぐ横で話しかけた。

「今度のホグズミートなんだけど、一緒に行ってくれないかしら?」
「構わないけど、何かあったのか?」
シリウスはソファに背中を預けて、足を組んで座り込んだ。その分、私への距離がまた近くなる。
私はシリウスの顔を覗き込む。楽しくなって微笑んだら、シリウスも微笑み返してくれた。

「この間妹へのお土産選ぶの手伝ってくれたじゃない?」
「ああ、クリスマスに髪飾り買ってたな」
「あの子とても喜んでくれて。…言葉には出さないけど、態度で喜んでるの丸分かりなのよ。本当に可愛い子だわ」
「それはよかった」
クスクス笑いながら言えば、シリウスもとても嬉しそうに答えてくれた。
クリスマス休暇前、妹へのプレゼントのことで悩んでいたら、シリウスが一緒にお店を回って色々と探してくれたのだ。
一緒に悩んでくれて、最終的には彼が選んだ髪飾りにした。

「シリウスが選んでくれた物がやっぱり良かったと思うのよね」
「君だって選んだじゃないか」
「でもあの髪飾りがいいと言ってくれたのはシリウスよ」
「最終的に選んだのはリリーさ」

やり取りが面白くて思わず笑えば、彼も小さく笑った。

「だからね、よければまたシリウスに選ぶの手伝って欲しいの」
「俺でよければ、喜んで」
「有難うシリウス!」
嬉しくて、シリウス大好きー!なんて叫びながらまたより一層強く彼に抱きつけば、軽く苦笑しながら彼は私の腕に手を添えた。
小さく、分かった分かった、って言いながら私をあやす彼の手の温度が嬉しくて、嬉しくて。

ああ、なんて幸せなんだろう、
「ああもう君たち!!!くっつきすぎだよ!!!!!」



…幸せをかみ締めていたら、いきなり叫ばれて雰囲気はぶち壊しだ。
私は声の主を軽く睨んだ。

「うるさいわよジェームズ」
「ああリリー!愛しのリリー!!僕というものがいながら何でシリウスに抱きついているんだい!?」
「だって私、シリウスのこと大好きだもの」
「シリウスもシリウスだよ!何でそんなに大人しく抱きしめられてるんだい!?僕が抱きついたら殴るくせに!!」
「そりゃあ、お前に抱きつかれたら気持ち悪すぎるだろ」
「僕も混ぜてー!!」
言いながらジェームズはソファにダイブしてきた。シリウスの上に乗って、そのまま私も抱きしめられる。
「ちょっとジェームズ!」
「あーもー、」
シリウスは溜息をついてやれやれといった感じでジェームズの背中に手を回した。
あやす様に軽く背中を叩きながら、シリウスは苦笑する。

「お前、どっちに嫉妬してるんだよ?」
するとジェームズが抱きしめる腕に力を込めた。その所為で私はバランスを崩し、ジェームズに寄りかかる体勢になる。
ああ、この体温もまた暖かい。

「両方、に決まってるだろ!」

そう必死に叫ぶ姿がとても愛しくて。多分シリウスも同じ気持ちだろう。
2人で同時に噴出して、思いっきり笑ってしまった。

「なんだい2人して笑うなんて。言っておくが僕の気持ちは本物だよ!」
馬鹿にされていると思ってしまったのだろうジェームズが、口を尖らせながらそう言うから。
それもまた面白くて、愛しくて、笑いが止まらない。

「分かってるよ、ジェームズ」
「私も、2人とも大好きよ!」



ああなんて、幸せなんだろう。
止まらない笑いに、私は幸せをずっとかみ締めていた。













『ずっとずっと幸せでいられますように!』