はらはらと舞い降りてくる雪を見上げて、大きく息をはいた。
出てきた息は、白くて。

冬だなぁと、なんとなく思う。

彼は、こんなに寒い中、相変わらず一人でいるのだろうか。

そう思ったらじっとしていられなくて、家を飛び出していた。
せめてマフラーくらいしてくるべきだったかな、と少し後悔して。だけど引き返すことはしたくなかったので、ひたすら進む。

彼に出逢った場所を訪れるけれど、彼の気配はしない。

「…何所にいるの…?」

空気に溶け込みそうな声で、呟くけれど、彼の気配はやはりしない。

いつもいつも、いきなり現れて、いきなり消えていく貴方。
どうしたら出てきてくれるの?
どうしたら、私は貴方に逢える?

「ねぇ、寒くない?」
私が尋ねるまで、寒さに気づかなかった貴方。

「一人で、寂しくない?」
私以外の人に、気づいてもらえない貴方。



はらはらと舞い降りてくる雪を見上げて、また大きく息をはいた。
息は相変わらず白くて、今が冬だと実感させる。

辺りを見回しても、人の気配はしない。



傘を持つ手に少し力を入れて、もう一度空を見上げた。

「…逢いたいよ…っ」

いくら呼んでも、現れてくれない貴方。


空から降る雪が顔に当たって、冷たかった。






『雪の中』







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幻影←望美だと言い張ってみます。