『彼からの』






「ユーリ」
呼びかけられて、すぐ上を見上げたら、いつもの顔。
あ、キスされる。
そう思ったら心臓が早く、大きく鳴り出して。
おれを抱きしめている腕に思わずしがみ付く。
力いっぱい瞳を閉じる。眉間には皺が出来ているだろう。だけど思わず力が入ってしまう。
顔は紅く染まって、少し火照ったような感じがする。
近づいてくる気配に心臓はバクバク。
酸素は脳まで届かない。

近くで彼が、くすっと笑った気配がした。
「ユーリ」
先ほどより近くで呼びかけられて、身体がびくっと驚きの反応をしてしまう。
そんなおれをまた小さく笑ったあと、コンラッドはおれに捕まれていない方の腕を動かす。
彼の右手がおれの背中を優しく撫でる。
「大丈夫ですよ」
何が、とは言わないけれど、何故か安心した。
コンラッドの言葉が身体中に染み渡ってくる。
強張っていた身体から、少しずつだけど、力が抜けていく。
「大丈夫です」
「…コン、ラッド……?」
恐る恐る目を開けたら、本当に優しそうに微笑むコンラッドが目の前にいて。
相変わらず近かったけれど、さっきみたいなドキドキしたり苦しくなったり、な反応はない。大丈夫だと、言いながら宥める様に背中を撫でる手が気持ちよくて。
安心しきって、彼に全てを委ねる。

「ユーリ」
彼に抱きしめられながら、彼の心地よい声を耳にする。
じん、と身体中に染み渡る、コンラッドの声。
コンラッドの温もりが、気持ちいい。
「俺は、あなたに無理をさせたいわけじゃないんです」
「別に…っ!無理してるわけじゃ…っ!」
彼の言葉に抗議しようと顔をあげるけれど、コンラッドはおれの頭を優しく撫で始める。
「わかってるよ。だけど、あなたにはあなたの速さがあるんだ。無理に俺に合わせてくれなくていい」
「コンラッド」
「俺の為に頑張ってくれたということだけで十分ですよ、ユーリ」


「今は、俺もこれで十分です」
そう言って、コンラッドはおれを抱きしめる腕に力を入れた。

「お、おれだって、やるときゃやるんだからな!?」
「知ってますよ」
おれの虚勢なんて見え見えなコンラッドは面白そうにくすくすと笑う。大して期待はしていないような態度に思わずむっとなる。
「今にみてろよ!」

「楽しみにしてますよ」
楽しそうに、余裕たっぷりに笑うコンラッドに、敵わないかもなんて最早弱気になりながら。
抱きしめてくれる温もりに安心するので、今のおれにはいっぱいいっぱいかもしれない。






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こんな反応もいいかなぁと思って。