『廊下に響く音』 パチン、と。 やけに奇麗に鳴った音が廊下に響いた。 近くにいる兵士は驚いて身体を強張らせている。 「どうしたのですか!?」 たまたま近くにいたのであろうギュンターが慌てて俺たちに近づいてきた。 持っているのは沢山の書類。多分グウェンのところに行く途中なのだろう。 なんて、張本人の俺はやけに落ち着いていて。 視線を下ろせば肩で息をしている陛下が目に涙を溜めながら睨みつけていた。 「一言言っとくけど、これは求婚とかそういうんじゃなくて本気で怒ってるんだからな!?もう絶対許さねぇ!」 顔を真っ赤にさせた陛下が声の限りに叫ぶ。 「バカっ!!コンラッドなんてもう知らない!」 叫んだと同時に走ってその場を離れていく。 慌てて追いかけようと思ったのだけれど、ショックは結構大きかったみたいで、身体が動かなかった。 背中が見えなくなってから溜息を一つ。 「何をしでかしたのですか!?コンラート!陛下があんなにお怒りになるなんて…っ例えあなたであろうと陛下を傷つけるものは許しませんよ!?私が制裁をくらわしてやりますっ!!」 なんて叫びながらギュンターはほっといて。 殴られた頬に手を添えて呟いた。 「…まいったな」 「なんと言い訳しようとも私は止まりませんよ!?止められない止まらないギュンターです!さぁコンラート!!覚悟なさいっ!」 書類を投げ出して俺に向かってくるギュンターを軽くかわして、駆け出した。 「ギュンター!その書類グウェンのところに持っていくんじゃなかったのか?」 走りながらそう叫んだら、ギュンターが慌てて辺りを見回した。 「私としたことが…。大事な書類になんてことを…っ」 ギュンターの気が逸れたうちに全速力でさっき駆け出した人物を追いかけた。 冗談交じりで言った言葉がまさかここまで陛下を傷つけるとは思っていなくて。 怒って睨みつけてくる彼の顔が頭からはなれない。 目に涙を溜めていた。今頃は泣いているのだろうか。 今更ながらに本気で慌てだし、彼が行きそうなところを考えた。 「…ユーリ……」 呟くように名前を呼んだ彼は一体どこにいるのだろうか。 ―――――――― コンラッドを叩きたかったっていうそれだけです。 続きません。(笑/ぁ |