空には丸い月と無限に散りばめられている星たちと。
地には少し肌寒い、だけど優しく吹いている風。


『月夜の出会い』


少し肌寒い空気が、何故か気持ちよかった。
なかなか寝付けなくて、上着だけを羽織って部屋の外に出た。
夜の、人気の無い血盟城は静かで。
電気、なんてものがないこの世界の夜空はとても奇麗で。
思わずその景色に見惚れてしまう。こんな奇麗な夜空は、あっちでは簡単に拝めるものではないだろう。

風を感じながら空を見上げていたら、後ろに人の気配。
近くまできて、その人影が少し驚いたのが感じ取れる。
「何してるんですか、こんな夜中に」
その声はとても聞き覚えのあるもので。だけど、いつも笑顔で穏やかな彼の口調とは違う、少し諌めるような声。
見回りをしていたのか、彼もたまたま起きていたのか。
振り向いて彼を見たら、服装は軍服とは違う、軽いものだったからたまたま起きていたほうなのだろうか。

「寝れなくて」
笑いながら答えれば、少し怒ったような、そんな顔。
「こんな夜中に一人で出歩かないでください」
「う…ごめんなさい」
ウェラー卿に逆らうなんて、そんな大それたことは出来ないのでここは素直に謝っておく。
おれの言葉を聴いて、コンラッドの表情は柔らかくなる。仕方ないな、とか思ってるんだろ。おれだって夜中に一人でうろうろ遊ぶ趣味はございません。子供扱いはやめていただきたい。
まぁコンラッドから見たらおれなんてまだまだ子供なんだろうけど。
「こっちの空って奇麗だよな」
月があまりにも眩しくて。星たちひとつひとつが美しくて。思わず見入ってしまったのだ。

寝れなかったから、気分転換ってやつ。
すぐに帰るつもりだったのに、あまりにも奇麗だったから。


「そうですね」
おれの隣に来て、コンラッドがおれと同じように夜空を見上げる。
そんな横顔に、思わず見入ってしまって慌てて顔を振る。恥ずかしいことこのうえない。
「陛下?」
「なっ何でもねぇよ!ってか陛下って呼ぶな、名付け親」
「すいません、つい癖で」
いつものやりとりが、何だか温かかった。
「ユーリ」
呼ばれて彼を見上げる。
近づいてくる彼の瞳を見つめる。その中で輝く、銀色の星。
ああ、この星たちも奇麗だな。
目の前いっぱいまで広がる星を見つめて。思わず見惚れて。

「…んっ」
触れてきた唇に、瞳に見入っていたおれは思わず声を出してしまう。

触れるだけの、優しいキス。

離れたと思ったらコンラッドは、おれに着ていた上着を被せた。

温もりが、気持ちいい。
肌寒かった空気はどこへいったのか、今はとても温かい。

「そんな薄着だと風邪ひきますよ」
「でもそれだとコンラッドが寒いじゃん」
「俺は平気です。鍛えてますから」
爽やかに笑いながら言うから、返すタイミングもきっかけも無くしてしまう。
「でも、」
寒いときに、一人だけ温かい思いをするのは何だか気がひける。なんとかして返そうとしたけど。

「それじゃあ、俺の部屋に来ません?ここよりは暖かいと思いますけど」
おれの思っていることがわかったのか、コンラッドは嬉しそうに提案する。
「眠れないんでしょう?付き合いますよ、寝れるまで」
「………ばっ!何言ってんだよ!?」
一気に体温上昇。顔は真っ赤。
コンラッドさん。顔がやらしいです。

「どうします?」
…答えなんてわかってて尋ねてくるんだからタチが悪い。

「……………いく」
本当に小さい声で呟いたから聴こえてるかどうか微妙だったけど、嬉しそうに微笑む彼を見る限り、聴こえたらしい。

「それじゃ、行きますか」
「…なんで手繋ぐんだよ」
顔は紅さを増していくばかり。

「今日は寒いから」
爽やかに微笑んでるコンラッドが憎らしい。

おれは寧ろ暑いですよ、コンラッドさん。
だから。おれがコンラッドの手を振りほどかないのはだから、だからな。


上昇した体温に、冷たいコンラッドの手が、気持ちいい。



おやすみなさい、と月に向かって小さく呟いた。

これから瞳に映るのは、隣りで微笑んでる人物だけだろうから。
また奇麗に輝いてるときに、会おうな。







――――――――
月夜の挨拶でのユーリさんの発言は多分こんなことだと…。(笑/何
ってか最初こんなの全然考えてなかったのにユーリがあんなたまらないこと言うから!(笑)(前にも言われたなとか言い出しやがって!)(何)
思わず妄想の世界にこんにちわですよ。即効でできましたよ。(笑)
前の『おやすみなさい』はコンラッドさんへの別れの言葉で、今回のはお月様への別れの言葉です。
あっちは永遠にグッバイみたいな感じだけど今回はまた会おうな的な。

この後は何もなかったのだと思いますよ。(笑)(ってか月夜の挨拶だとそういう設定だった)
暖かいベッドに二人で包まりながら、眠るまで野球の話でもしていたんだと思います。