『2cm』



キスされて。いつの間にかベッドの上で押し倒されていて。覆いかぶさる貴方は、真面目な表情。

「……ちょっと待って」
服の前を開こうとしているシンの手を握り締める。
ほら、何かおかしい。
僕の中で、ちょっとした違和感。

「何ですか?」
「何って言うか……。僕が下なの?女役なの?」
この状況に、違和感を感じてしょうがないのだ。
何で僕が押し倒されてるの?
何で僕の上のシンがいるの?

「……この流れで言ったらそうでしょうね」
「え」
「ご不満ですか?」

キスするときから眼鏡は外されていて、瞳がとてもよく見える、と思う。
不満か、と問いかける貴方は、少し寂しそうで、少し…楽しそう。

「というか、なんか…こう……シンにされるのって想像できないというかなんというか……」
「想像?」
そう問いながら、頬にキスするのはやめて欲しい。
このキスに慣れてきてしまっているあたり、やっぱり僕が下なのだろうか…。

「そう。想像。こう…シンってのがなんとなく違和感というか…。もっと僕より背が大きくて僕より体格がいい人ならなんとなく想像出来るんだけど…。例えば…ユダとか…」

何となく思ったことを口に出してみる。
僕自身、何でこんなに違和感を感じているのかわからなくて、天井を見ながらただ思ったことを考えもなしに口に出してしまった。

ピクッと僕の頬にキスを落としていたシンの行動が止まる。
顔をあげたシンは、笑ってはいるけど。…雰囲気は怖い。

「私とのことは想像出来なくて、ユダとのことは想像出来るんですか?というか、シヴァはユダとのことを想像したことあるんですか?」

…笑顔が怖い。
今更だけど、この状況は僕にとってとても不利なものだということに気がついた。
身体を挟むようにして置かれたシンの腕。すぐ上にはシンの身体。
逃げ場が、無い。

「いやっ!さっきのは物の例えというか!言葉のあやというか!っていうか別に、ユダとそ、そんな…っことを想像したことなんか…っ!な、ないしっ!」
顔が近寄ってきても、僕は後退することなんて出来ない。
必死に取り繕っても、シンは相手にしてくれない。

「ただ…。ただ、そう!なんかシンがこんなことしてくるのが想像できなくて!まさかって思って!」
いつもいつも僕の隣で微笑んで。
僕の唇に軽いキスをして。
たまに深い口付けになったこともあったけど。

だけどずっと、シンは何もしてこなかったし。僕としてもシンは清いイメージがあったから、しないものだと思っていたんだけど。


「……私だって男ですよ?キス以上のこともしたいに決まっているじゃありませんか」
そんなはっきり断言されても。

「で、でもっ!シン、いつもそんな素振り見せなかったじゃないかっ!」
「シヴァが可愛すぎて手が出せなかっただけですよ。だけど今日はいい加減覚悟を決めました。シヴァも覚悟を決めて私に抱かれてください」
「な…っ!!な、なっ!!何言ってるんだよ…っ!!いらないよ、そんな覚悟っ!!」
思わず顔が赤くなりながらも叫ぶ。
何てことを言ってるんだ、この男は。


シンは僕の耳元に唇を寄せて、囁いた。
「ユダのことなんて考えられないようにしてあげますよ」
「……っ!」

顔が赤く、かなりの熱を持って、湯気が出そうだ。

思わず固まってしまった僕を気にするでもなく、僕の服の留め具に手をかけた。



やっぱり僕が下なのかぁとぼんやりした頭で考える。
2cmしか身長差は無いけれど、でもやっぱり考えるならシンが一番いいな。





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何でシンシヴァはこういうシーンが多いんだろう…。(笑)
シンとシヴァの身長差2cm!真っ直ぐ前見たらお互いの瞳が見れるのねvとこの2人の身長にときめいてます。