『寂しい顔』



探してた、わけじゃない。
歩いてたら、たまたま見つけただけ。

一人で佇んでるユダがいた。
空を見上げて、遠い目をして。

驚いて、思わず足を止める。
前なら彼を見つけたら、喜んで声を掛けるか、遠くから見つめるかしていたけど。
今は彼に対して特別な感情は持っていないから、前みたいに、特別な視線で見てるわけじゃない。
だけど、空を見上げているユダが、あまりにも寂しそうだったから、気になってしまって。
思わず足を止めてしまった。

立ち止まったって、声をかけることも、これ以上近づくことも、僕には出来ないのだけど。

「……シヴァ?」
ユダの視線が、僕の方に向くと同時に名前を呼ばれた。驚いて、少し退いてしまう。
「ユ、ユダ…。あの、その、僕……」
なんと続ければいいのか、わからない。
ユダの様子が気になったから、ずっと見てました、だなんて、言えるはずがない。

「どうしたんだ?」
そう言いながら、ユダは僕に近づいてくる。僕は、動くことが出来ない。

「いやっその、歩いてたらユダが見えて、げ、元気かなーっと思って…」
必死にずっと見ていたことに対しての言い訳を述べるけれど、しどろもどろすぎて、我ながら情けない。
近づいてくるユダから逃げたいけれど、身体が動かないため、視線だけ逸らす。
前までは、あんなあからさまな態度をとっていたけれど、シンという恋人が出来た今、どう接すればいいのかわからない。

それに、ユダはシンが好きだったはずだ。
そのシンと僕が付き合っているなんて、ユダにとっては面白くない状況だろう。

もしかして、さっきの寂しそうな顔は、僕の所為?
僕がシンを奪っちゃったから?

「シヴァ」
びくっと肩が震える。思わず視線をユダに向ける。
色々と考えている間に、ユダは僕の近くにきていた。

瞳を見れば、どこか、寂しさを含んでいる。

「ユダ…。その……、ごめん」
寂しさを含んでいる彼の顔を見つめることが出来なくて、思わず俯いてしまう。
寂しくさせているのは自分なのだと、思うと居た堪れなくて。

「………何故謝る?」
「だって……。ユダ、シンのこと好きなのに……。そのことを知ってたのに僕…」
「オレが、シンのことを……?」
「だから…その……そんな寂しい顔させてゴメン…」
これ以上何を言えばいいのかわからなくて、ただただ深く俯いてしまう。

悪いとは思うけれど、彼を手放せない僕を許して。
お願い、そんな寂しそうな顔はしまいで。
貴方に対する気持ちは、恋愛感情ではなく、尊敬のものだったけれど、それでも貴方が『好き』なことに変わりないんだ。

「シヴァ」
呼びかけに促されるように顔をあげる。左頬に、ユダに手の感触がした。

それよりも僕は、さっきよりも深くなった寂しげな表情に戸惑ってしまう。
「ユダ…っ」
思わず名前を呼べば、近づいてくるユダの顔。

「オレが好きだったのは、お前だと言ったら…。お前はどうする……?」
「え……?」
言われた言葉の意味がわからなくて、固まってしまう。
それと同時に、口付けられた。触れるだけの、軽いキス。
何が起こっているのかわからなくて、僕の頭はパニック寸前。身体はピクリとも動かせない。

「ユダ!!」
呼ばれたのは僕じゃないのに、驚いて身体を震わせてしまった。
呼ばれた本人であるユダは、ゆっくりと僕から離れていく。

その動作を見ながらも、先ほどの声の主に驚いて、声のした方を振り向いた。
「シン」
僕が声にするよりも、ユダが先に人物の名前を言った。

そう、そこにシンがいたのだ。
普段の穏やかな様子とは違って、今は怒りを露にしている。

そんなシンを見てから、ユダは視線を僕に向けて、小さく呟いた。
「すまない」
「ユ……」
僕が名前を呼ぶよりも先に、ユダはシンとは反対方向に消えていった。
その背中を見つめて、見えなくなると同時に身体の力が抜ける。思わずその場に座り込んでしまう。
「シヴァっ」
シンは走って僕のもとまで来て、僕の顔を覗き込んだ。
「大丈夫ですか?」

大丈夫な、はずない。

瞳からは涙が止まることなく零れ落ちてくる。

「怖かったのですか?」
「ちが……っ」

怖かったとか、そういうんじゃなくて。


何で気づけなかったんだろう。
僕は今まで彼の何を見ていたのだろう。

悔しくて。自分に腹が立って。

「どうしよう……」

シンの腕に、ぎゅっとしがみ付く。

どうすればいいんだろう。
僕は、どうすれば。

彼に、あんな寂しい顔をさせたくはない。
だけど、彼の気持ちを受け入れるわけにもいかない。


僕には、この腕の温もりを手放すことも出来ないんだ。





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私的に、シンシヴァ←ユダだと凄く嬉しいです。
実はユダもシンもシヴァのこと想ってるんですよ!
別にシンシヴァ←ユダじゃなくても、ユダシヴァでもOKです。
とりあえずシヴァが想われてれば。(笑/何