『写真』 「なに、これ」 そういいながらシヴァが眺めているのは、一枚の写真。 テーブルに肘をつきながら、片手で写真を自分の顔の前に翳していた。 本の間にでも挟まっていたのだろうか。シヴァが先ほどまで読んでいた本をちらっと見て、そして写真をシヴァの後ろから覗きこんだ。 それは、まだ成長するまえの私たち。 一回り小さい、私とゴウとレイとガイとユダとルカ。 私、ゴウ、レイとガイの4人で遊んでいたところに、たまたま2人が通りかかって、なんとなくとった写真。 懐かしい…。 「昔、遊んでいたときに撮ったんですよ」 昔を思い出しながら、小さく微笑む。そういえばこのとき、ゴウとガイが蝶を捕まえようと躍起になっていたっけ。 レイはマイペースに花の冠を作っていて、私はその3人を横目で見ながら、本を読んでいた気がする。 「……ふーん」 懐かしんでいたところに、シヴァの相槌が入る。それはどこか、機嫌が悪そう。 「怒ってます?」 「別にー」 そう言いながら写真をペラペラと軽く振る。その写真が、気にくわないのだろうか。 少し頭を捻ってから、問いかける。 「ユダと一緒に写ってるのが気にくわないんですか?」 ユダはシヴァにとって恋愛対象ではないけれど、憧れている人物だ。そんな人物と私がこんなにも容易く写真に写るのが、気にくわないのだろうか。 今度ユダと写真撮りに行きます?と問いかけようとしたときに、返ってきた答えはやる気の無いもので。 まだ写真を見つめて、不機嫌そうな顔をしている。 ユダではないとしたら、一体何が彼の気に障ったのだろう。 「これ、なに」 先ほどと同じ言葉、だけど今度は写真というものを指したものではなく、写真のある場所に指を当てていた。 それは、レイの頭にかかった、花冠。 「レイが作った花冠ですけど…どうかしました?」 「別に、どうもしないけど」 何も無いなら、そんなに不機嫌なはずないでしょう。 一体なんだというのだ、と思いながら、シヴァの手にしている写真にを見る。 先ほどの問いかけからすると、花冠が気になるのだろうか。 花冠、先ほどシヴァが指差した、レイの頭についている花冠。そしてもう一つ目につく。 私の首に掛かっている、レイと同じ花冠。 「……私とレイが花冠付けてるからですか?」 レイがせっせと作っていた花冠は、その時2つ出来上がっていて。私に付けて、もう一つはノリノリで自分につけていた。 私に渡されて花冠は大きくて、頭を通り過ぎて肩まで落ちてしまう物だった。 「別にっ」 ふい、と顔を逸らす。 違うのか当たっているのか。 微妙な反応に、私は困るばかりだ。私、何かしました? 困りながら、もう一度写真を見る。同じ花冠を付けた私とレイ。ガイが楽しいそうに笑って、写真に慣れていないゴウが戸惑いながらも笑顔を作って、クールなルカとユダは、格好良く後ろにいる。 一度頭を傾けて、髪がはらりと揺れるのを感じながら、シヴァの横顔を見た。 頬杖をつきながら、窓の外を見つめている。その顔はやっぱり、不機嫌そうで。 仕方ないので、もう一度写真を見る。 レイが凄く楽しそうに笑いながら、映っていて、……もしかして。 レイの姿を見ながら、ふと思ったことを問いかける。 それは本当に、そうだったらいいなと私の望も入ったことなのだけど。 「……レイが私の腕を組んでいるのが気にくわないんですか?」 「なっ!別にっ!そんなわけないし!!」 問えばすぐに顔を真っ赤にさせて貴方が私の方を見て叫ぶ。 この反応に、驚くのは私の方。 まさかまさにそうだとは思わなくて。私の希望の入っていた、問いかけだったのだけど。 まさか本当に、嫉妬していてくれていたなんて。 「…そうですか」 そう言いながら、私は微笑む。嬉しくて、嬉しくて。 「別にっ!そんなっレイが腕組んでるのが嫌だったとかそういうわけじゃないし!お揃いで花冠付けてるのも僕にはどうでもいいことだし!」 顔を真っ赤にさせながらそういう貴方は、本当に可愛くて。 嬉しくて、そして愛おしい。 彼に頭に手をのせて、優しく撫でる。 「ちょ、シン!」 私の行動に戸惑うけれど、振りほどけなくて、シヴァは困ったようで。 拒まれないのをいいことに、私はシヴァの後ろから抱きつく。 「ちょっと!シン!!」 彼の首に回した腕に、ふわりと彼の髪が掛かる。それがただ、気持ちいい。 「今度、一緒に写真撮りましょうか」 「…なんで」 いきなり抱きしめられたことが不服なのか、少し頬を膨らませながらシヴァが問う。だけどその顔は今も赤く染まっているから、嫌ではないのだろう。 本当に、素直だなぁ。 「私たちがラブラブなんだって、皆に見せ付けるために」 「なっ何言ってるんだよ!何で、そんな…っ!!」 ラブラブという単語に反応してしまったのか、より一層真っ赤になって、じたばたと暴れだしたシヴァに、小さく笑う。 ぎゅっとまた抱きしめて、シヴァにくっ付いく。 写真を撮ったら、絶対私の部屋に飾りましょう。 貴方には見せ付けるため、と言ったけれど、実際はそんなことするはずがない。 こんな可愛い貴方は、私だけ見てればいいんです。 シンっ放せよっ!と叫んでいる貴方をより一層抱きしめながら、どんな写真を撮ろうかな、と考えた。 ―――――――― 写真は、KIZUNA&SADAMEのジャケットです。 レイってばシンの腕抱いてます。可愛い奴だなぁ! |