息が荒い。
心臓がバクバクいって少し苦しいけれど、それさえも心地いいと感じてしまう。
落ち着こうと、目を瞑って深呼吸をひとつする。
するとそんな僕の頬に手が添えられた。

目を開けて僕の上にいる彼を見ると、辛そうな顔をしていて。
「シン…?」
どうした、と問う前に彼が僕に言う。
「すいません…」
言葉の意味がわからなくて、僕は彼の顔を覗き込む。
シンが謝らなければならないことなど、何も心当たりはないのだが。
「何で?」
「貴方に、辛い思いをさせてしまいました…」

そう言って、もう一度シンは謝った。声は震えていて今にも泣き出しそう。
そりゃあ最初は痛かった。思わず泣いてしまったほどだ。
…けれど、僕としては、
「嬉しかったよ」

先ほどまでの行為は恥ずかしくて死にそうだったけれど、それよりも僕はとても嬉しかった。
「シンと一つになれて、さ」
言ってて恥ずかしくなってしまって顔が赤くなってしまう。
だけどこれだけはちゃんとシンにわかって欲しい。
確かにシンがいきなり押し倒してきたけれど、僕は嫌がってなんかいなかったじゃないか。
僕はちっとも嫌じゃなかったし、辛くなかった。

「だからそんな顔をしないで」
そう微笑みかけたら、シン驚いた顔をして。

僕はシンに向かって手を伸ばす。本当は抱きしめてあげたいけれど、身体がダルくて起き上がれないから彼の頬に触れるだけ。
そして思わず小さく笑った。
「なに泣いてるのさ?」
流れている涙を拭おうとするけれど、僕の手はシンに掴み取られて。

「シヴァだって、泣いてます」
そう言われて初めて自覚した。どうやらシンに話していたときから涙が零れてしまっていたらしい。
涙に気づいて拭おうとしたけれど、それよりも先にシンが顔を落として僕の瞳に口付けた。
くすぐったくて、僕は笑ってしまう。

「ねぇ、何で泣いてるの?」
笑いながら問いかければ、シンが少しだけ顔を上げて囁いた。
「嬉しいから、ですよ」

「どうして?」
何だかとても嬉しくてそしてとても楽しくて、笑いながらシンに問いかける。
答えはわかっているけれど、それでもシンに口からちゃんと聞きたいのだ。

「シヴァと出会えて、シヴァと想い合って、シヴァと一つになれたからです」
そう言うと同時に口付けた。シンの首に手を回して抱きしめればシンはより深く口付けてくれる。



身体はダルいけれど、そんなダルさも何故か心地いい。
せっかく落ち着けた呼吸はまた乱れてしまうけれど、シンにされるなら別にいいかな、なんて思いながら僕は瞳を閉じた。







『その後』








―――――――
事後ー。(笑)
シヴァを傷つけたくないと思って今まで手を出さなかったんだけどある日ぷっつんしちゃっていきなり押し倒しちゃったシン。
その後、の話です。(笑)