『安らげる場所』


こくこく、と船を漕いでいる彼が可愛かった。


私の部屋にやってきて、シヴァが好む本を見つけたらしく。
ベッドに寄りかかるようにして座り込んで、ずっと読みふけっている。仕方がないので私も隣に座って読みかけだった本を手に取った。

そろそろ本も終盤になるころ、ふと時計を見れば時刻はもう今日も終わり間近で。
もうこんな時間になったのか、と思いながら、隣のシヴァを見る。

本はもう読み終わったのか、それともシヴァの意思に関係なく閉じてしまったのか。
本は私と反対側の、シヴァの隣で閉じられていて、シヴァは少し俯き加減。

シヴァは隣で、こくりこくり、と船を漕いでいた。
「シヴァ?」
問いかけても、返事は無い。

もうこんな時間ですものね。
「シヴァ、寝るならベッドで寝てください。風邪をひきますよ?」
「んー…。」
そう応えてはいるけど、多分わかってはいないんだろうな。

次第にシヴァの頭は下がってきて、私の肩の上にもたれ掛かる。
頭が安定したことに落ち着いたのか、シヴァはすぐに規則正しい呼吸になった。

「シヴァ?」
呼びかけても、やっぱり返事は無い。

しかたないなぁと、苦笑しながらも。だけど、私に身体を任せて寝てくれることが嬉しくて、その寝顔が可愛くて、ついつい顔が緩んでしまう。

微笑ましい光景なのだけど。どうしようか、と頭を捻る。
起こすなんてことは出来ない。したくない。

私も読んでいた本を閉じて隣に置いた。

なんとかしてベッドにあげたいのだけど。
けれどシヴァの頭は私の肩の上。文字通り身動きが出来ない。
少しでも動いたら、シヴァが起きてしまいそうで。

そもそも、こんな体勢で辛くないのだろうか。そう思ってシヴァの顔を覗きこむけれど、シヴァは完全に熟睡モード。別に辛そうな感じはない。

せめて、もう少し身体を近づければ楽になるだろうか。
今のままでは少し離れていて、腰に負担がいきそうだ。
私が動きたかったが、シヴァの頭を抱えては難しいので、シヴァの肩に腕を回して引き寄せた。

「んー……」
「シヴァ?起こしてしまいました?」
恐る恐る声をかけたけど、シヴァはまた規則正しい寝息をたてていた。
その光景が、本当に微笑ましい。

肩に回したままだった腕に伝わる、シヴァの感触が気持ちいい。
顔に触れるシヴァの髪の匂いも、心地いい。

なんだか私も眠くなってきて、苦笑する。

貴方の隣は、心地がよすぎて。
本当に、罪な人ですよ、貴方は。

後ろにあるベッドから、薄い毛布を引っ張って、シヴァと自分にかけた。

風邪をひかないように、毛布をちゃんとかけて、身体を寄せ合った。



私がこんなに安らげるのは、貴方の隣だけ。




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永遠の愛は刻まれる(byシン)の『そっと肩に回した腕の心地よい感触さえ罪の香りを漂わせて』です(笑)
よーっし。ここはクリアっ!
シンソングをシンシヴァにしよう計画実施中です。(笑)