03.君の一言で舞い上がる







そしてまた、一緒にランニング。
前を走る背中は何故か見えるより大きく感じる。
そして、どことなく遠く。
いつになったら、この背中を捕まえることが出来るのだろうか。
ってかオレって少しでも兄ちゃんに近づけてる?
鍛えてるんだけど、何故か時間がたつにつれてより遠くに感じるんだ。
多分それは、オレが少し前に進んだことで、視野が広がり、兄ちゃんとの距離がはっきりとわかってきたから。
兄ちゃんは、オレよりとても遠いトコロにいるんだ。


なぁ、どうしたら兄ちゃんに近づける?




そんなことを考えてたからかな。
いつもより力を入れて、走っていたら、…途中でバテた。
「暑いぃ……疲れた……」
もう一歩も動けないだろう。情けなくて涙が出てくる。
頑張ろうと、思ったのに。少しでも、兄ちゃんに近づこうと思ったのに。
悲しくもオレの気持ちは空回り。
「ほれ」
そんなオレの額に冷たい物が押し付けられる。
「気持ちいぃー…」
火照った身体にこの冷たさは気持ちがよくて、思わず目を瞑ってそれに感覚を集中させてしまう。

「大丈夫か?」
目の前に立った兄ちゃんがちょうど日差しよけになってくれて、とても有り難い。
夏の日差しは、容赦なく。だけどこれじゃ兄ちゃんが暑いだろう。

「ん。大丈夫」
目を開ければ覗き込むようにしてオレの目の前に立っている兄ちゃんと目が合う。
そして額に押し付けられている物に手を伸ばした。
「スポーツドリンク?」
「そこのコンビニで買ってきた」

「…ありがと」
「おう」
ニカっと笑いながらも、兄ちゃんはやっぱりオレの前に立っていて。
「兄ちゃんも座ったら?」
そう声を掛けたんだけど、いいって断られてしまった。
「でも隣り空いてるし」
このベンチには、オレ一人しか座っていないから空いてるも何もないのだが。
「いいって。それより早く飲めよ」
そう言ってオレにスポーツドリンクを差し出して促してくるから、それに歯向かうことも出来ずに、受け取って、口の部分を空けた。
そして口をつける。
冷たいスポーツドリンクが身体に入っていく感じはとても気持ちがよくて。
一気に半分くらいまで飲み干してしまう。
「ぷはーっ美味いっ」
「そりゃよかった」

嬉しそうに笑う兄ちゃんを見ていたら、何故かオレも嬉しくなってきて。
それと同時に、兄ちゃんを見つめていると切なくなる。



なぁ、どうやったら兄ちゃんみたいになれる?
オレ少しは近づけてる?
毎日頑張って走ってるけど、この効果はちゃんとあるのかな?
どうやったら、兄ちゃんの隣りに立てる?



「…どした?」
「へっ?何が?」
尋ねられても、思い当たるふしがないので首を捻るしかない。
兄ちゃんは僅かに眉を寄せながら、オレを覗き込んだ。
「暗い顔してるけど。悩み事か?」
「えっ!?な、何でもないよ?」
…今のは自分でもわかる。焦りすぎだ。だけど本当に色々考えてたから。しかもそれは兄ちゃんに対することだし、少し恥ずかしい。

「…オレに言えないことか?」
兄ちゃんがまた眉を寄せる。
「言えなく…はないけど……」
真剣な兄ちゃんの顔が、見ていられなくて思わず俯いてしまう。両手で握り締めているスポーツドリンクのペットボトルが気持ちいい。

「どうした?」
オレの髪を優しく撫でながら、兄ちゃんが尋ねる。
ずるいぞ。そんなことされてら言うしかないじゃんか。

「…オレ…兄ちゃんに少しでも近づけてるのかな、と思って…」
俯きながら、呟いた。兄ちゃんの手が反応して一瞬動きを止めた。
だけどすぐにまた優しく撫でだす。
「…バカだなぁ…」
少し笑いを含んだ言い方で。
「何だよ」
ムッとして顔を上げる。こっちは真剣に悩んでいるというのに、バカとは失礼な。

「そんなことマジになって悩んでるなんて。バカだよ。まぁ…そんな空が好きなんだけど」
何だよ、こっちはすんごい真剣にだな…え?

「お前はちゃんと成長してるよ。オレが言うんだから間違いない。筋肉だってついてきてるじゃん。頑張って特訓した成果だな」
ニカっと笑いながら言うから。その笑顔がとても眩しいから。
バテた所為。無理して走った所為。
なんとか理由をこじつける。
オレの顔が紅いのは、多分それの所為。

「それに、兄ちゃんは空がオレに追いついて、…追い越すまで。追い越しても、いつまでも特訓に付き合います。
だからさ、空は空の速さで頑張れよ。オレいつまでだって付き合ってやるから」

笑いながらオレの頭をぐしゃぐしゃ撫でてきた。何すんだよ、って少し口を尖らせたけど。
だけど言われた言葉が嬉しくて、思わず笑ってしまう。

「そっか」
顔をあげて、笑顔でそう答えた。




オレはオレなりに、頑張ればいいんだな。
兄ちゃんの隣りを歩ける日を目指して。
兄ちゃんはそんなオレに付き合ってくれるんだし。




少し温くなったスポーツドリンクだけど、やっぱり美味しかった。








――――――――
続いてるのかしら?続いてるんですよっ!(笑/何
ってかコイツららぶらぶやーん。(ぁ
まだ付き合ってないです。空君の片思いっぽいけど空もまだ自覚してないです。
自覚なしだけど兄ちゃんの隣りを目指してるんです。

お題。『君の一言で舞い上がる』
さぁその一言はどれでしょう!?(笑/何

個人的には『そんな空が好き』です。(何
一応空も反応してるんだけど、無自覚だから、なんか嬉しいな、程度で。
顔が紅いのは多分『好き』に反応した所為。(笑

そんな個人的感想です。(何
まぁお好きな解釈でどうぞ!(何