「ねぇ、兄ちゃん」
その微笑は、いつもの空からは想像のつかないもので。


「一緒に、死んで?」
瞳は、金色に輝いていた。




『金色と蒼い色』



「……空?」
掠れた声で、目の前の人物の名前を呼んだ。

いつもと違う雰囲気で微笑むその人物は、両手でサバイバルナイフを構えていた。
どこから持ってきたんだよ、そんなモン。そう思いながらナイフに視線を向けたらなんとなく懐かしい感じがした。
ああ、アレ空たちが小さい頃少し遠くの川に遊びに行ったときに、使ったな。
あれで昼飯作ったりしたんだよな。
どこかにしまってそれきりのはずだったんだけど。どこで見つけたんだ?

「兄ちゃん」
優しく、呼びかけられる。
懐かしい思い出に浸っていたオレは、この声で現実を突きつけられた。
空が持っているものはサバイバルナイフ。オレに向けているものはサバイバルナイフ。
空は動かず、オレの目の前でいつもと違う笑みで微笑んでいる。



「オレ、さ。殺さなきゃいけないんだ」
金色の目を見て、思わず泣きそうになった。

「お前…薬の効力弱まってたんじゃねーの?」
だから数年前刺されたときも、殺されずにすんだんだろ?七海たちには何も危害を加えなかった。
なのに、何故今頃になって?
「弱まってたよ、あの頃は。だけどこの間」
研究所に乗り込んで、直を助けて相沢を倒したのは数ヶ月前。
やっと幸せが訪れたと、思ってたのに。

「…いつの間に」
「兄ちゃんが来る、ちょっと前」
あの時、相沢と接触してたもんな、お前。

「…ごめん」
それしか、言えなかった。
なんて言えばいいのかわからない。
金色の瞳と、いつもと違う表情と、独特の雰囲気。
ごめんな。オレが巻き込まなかったら、こんな風になることもなかったのに。
オレが早くついてたら、また薬を飲まされることもなかったのに。

「…ごめん…っ」
思わず視界が霞む。オレには泣く資格なんてないのに。泣きたいのは、空だろうに。
「兄ちゃん」
頬を伝った涙を左手で優しく拭いながら空はオレの顔を覗き込む。
「オレのこと好き?」
金色の瞳に、吸い込まれそうになる。

「あぁ。好きだぜ、空。世界の何よりも」
その言葉を聴いて、目の前の空は嬉しそうに笑った。
オレは、涙が止まらない。

オレたちがこれからは幸せだ、と浮かれているときにお前は薬と戦ってたんだな。
一人で、オレたちに心配かけまいとして。
少しは頼ってほしかったけど、それが空だもんな?

「オレも。好きだよ、兄ちゃん」
嬉しそうに微笑みながら、サバイバルナイフをオレの腹に突き刺した。
勢いよく抜いたら、止まることなく流れ出てくる紅い血。
立っていられなくて、その場に倒れこむ。





「……兄ちゃん」
先ほどとは音程の違う声。
顔を上げて空の瞳を見れば、いつもと同じ、蒼い色。

「オレも、好きだよ。大好き」
微笑む瞳からは次々と涙が溢れていて。
「…そら……」
躊躇いも無く、自分の腹に、オレと同じようなところにナイフを振り下ろした。
勢い良く抜いたところからは、オレと同じように流れてくる紅い血。

オレのすぐ横に倒れこんで、空は微笑む。
「ごめんな。…ありがとう」
何で謝るんだよ?
何で礼言ってるんだよ?

何もしてねぇぜ?
謝られるような、礼言われるようなことなんか、何もしてない。
寧ろ謝らなきゃいけないのはオレのほうだ。

涙が止まらない。
視界がぼやけているのは、涙の所為か、それとももうこの命が長くないからか。


空の顔、見たいな。
手を伸ばして、空の頬に添えた。
甘えるように、オレの手に擦り寄ってくる空。




「大好き」

そう微笑んでいる瞳は、何色だろうか。


「オレも、愛してるよ」







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薬空書けないっスよ!!(笑/ぁ
真一郎×薬空書いてみようと意気込んでみたものの。
…薬空ってムズカスィー。ってかアイツもっと鬼畜?…イマイチキャラ掴めてない…(苦笑/ぁ
しかも薬空なんだか普通の空なんだかよくわかんなーい。いやーん。
えと。これはホワイトフラワー真相ENDを踏まえた真空です。