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01.恋ってどんなもの ドキドキ、するんだ。 一緒にいると、何故だかわからないけど心臓が早くなる。 ランニング中、前を走る背中を見つめる。そして一つ、溜息。 「どうかしたのか?」 オレの溜息が聴こえたのか、兄ちゃんの背中から声が掛けられる。 「…ううん。何でもない」 なるべく明るい声で、そう心がけて答える。兄ちゃんに、心配をかけるわけにも、気づかれるわけにもいかないから。 「…そっか」 何でもないなんてことは、兄ちゃんだってわかっているだろうけど。 ここで無理に追求しないで、オレから話すのを待つってところが大人だなぁなんてしみじみ思う。 「休憩するか?」 そしてさり気ない気遣い。 「ううん。大丈夫っ!まだ走れるよ!」 これは本当のことだ。疲れてもいなければ身体の調子が悪い、なんてことはない。 そうか、とどこか安心したように答えながら、兄ちゃんは走り続ける。 そしてまた無言で前を走る背中を見つめる。 『ドキドキしたり、一緒にいると嬉しかったり、よくわかんないけどいつも見つめちゃったり!』 無邪気な後輩の声が頭をよぎる。 数日前に交わした会話が、頭から離れないんだ。 「空先輩は、恋とかしたことないのかよ!?」 何故かいきなりこんな質問をされた。いや、いきなりでもないか。一応それまでの話はそれっぽいことだったし。 だけどいきなり少し驚きながら言われた言葉に少し後ずさる。 「んだよ、悪ぃかよ」 「いやぁ…。何か意外だなーと思って。あ、でも空先輩だもんなぁ…。っポイかもなぁ…」 「…なんだよ」 少し拗ねて睨みつけても、目の前の後輩には効果なし。 オレの言葉なんて気にすることも無く、楽しそうに笑って。 「そんな怒るなって!それじゃあそんな空先輩に、学君が特別講座!『恋のいろは〜ラブストーリーは椅子に座るところから〜』を行ってあげよう!」 「椅子に座るところって何だよ?」 「椅子に座り損ねて尻餅ついた人に手を差し伸べたところからラブストーリーってのは始まるんだよ!」 そんな自信満々に凄いだろ、とか言われても。 「わけわかんねぇぞ…」 何だか疲れて軽く溜息。大体オレは別に恋について聞きたいなんて言ってないし。 そう思っていても、口にはしない。したとしても市川の口が止まるはずがないから。 とても楽しそうに笑っている顔に勝てる言葉なんて無いのだ。 「それでだ。恋っていうのはですね、羽柴君」 「はいはい。どーいうものなんですかね、市川先生」 何だか成り切って、少し声を低めて喋る市川にオレもしぶしぶながら付き合う。 「何だかよくわからないんだけどさ。自然に意味も無くドキドキしたり、一緒にいると嬉しかったり、よくわかんないけどいつも見つめちゃったり!なんて現象が起きます!」 力を入れて、握りこぶしなんて作りながら市川は熱く語る。 その言葉にオレは思わずドキッと反応してしまった。 ドキドキ、するんだ。 一緒にいると、何故だかわからないけど心臓が早くなる。 一緒に走ってる時が好き。 まだまだおいつけないなぁなんて悔しくも思うけど。だけど楽しい。 市川の言葉で、思わずあの人、を想像してしまう。 「…空先輩?」 黙り込んでしまったオレを不審に思ったのか、市川が覗き込むようにしてオレの顔を見上げた。 「ん?あ、ゴメン」 何となく謝ることしか出来なくて。そう咄嗟に口に出した。 そうしたら、市川はオレの言葉に驚いて。 「何謝ってんだよー?」 笑いながらオレの背中をバンバンと叩く。うっ…少しは手加減しろよっ! 「痛ぇって!」 「あ、わりぃわりぃ!」 …何だかこの笑顔が憎らしくなってきたぞ。 「そういやこの間駅前に出来た本屋!凄いんだぜ!化学の本結構品揃えいいんだ!アレはお奨め。一回尋ねてみる価値有り!」 いや、オレ化学の本別にいらねぇし、なんて笑いながら答える。 それからは恋、なんて言葉は出てこなかったんだけど。 ああみえて市川も結構いい奴だからなぁ。オレが変になったから触れないでいてくれたんだろう。 だけど、あれ以来市川の言葉が離れない。 ドキドキ?嬉しい?見つめてる? わからない。よくわからないんだけど。 ドキドキするし。一緒にいると楽しいし。今は背中を見つめてる。 だけど。…だけど。 恋ってものが、どういうものなのか、よくわからない。 ―――――――― 真空フェスティバル開催!イェーイ。自己満足バンザーイ!(笑/ぁ 学が書けて嬉しい限りです。学好きだー。本当好きだー! 椅子から落っこちて学に手を差し伸べてもらいたいわv(馬鹿) 因みに椅子の出会い編の後は、『ロフトで会計を済まそうとレジに向かったときにレジの前でぶつかる。(要するにレジの取り合い)これでばったり再会』『歯ブラシはこういうのがいいんですよ、とアドバイス。親密度アップ☆』です。(笑/何)(ただ一番最初の文字いろは、にしただけ) |