02.知らずに目で追ってる






あ、水都だ。
中庭で祭、藤守といつもの3人で昼飯を食べていたら、2階の廊下に水都の姿発見。
昼休みにアイツが数学教諭室に篭ってないなんて珍しい。
…別にオレは昼休み水都が何してようと知ったこっちゃない。だけどいつも昼休みとか休み時間は水都の姿を見ないから勝手に篭ってることで解釈。
ってか休み時間まで見たくねぇよなぁ…水都なんて。
ほら、廊下にいる奴らビビってんじゃん。
兄ちゃんだったら明るくて楽しいから一緒にいてもいいけど、水都はなぁ。
アイツの前でリラックス、なんて出来る奴がいるのだろうか。

「空?」
「んあ?」
呼びかけられて、視線を声のほうに向ける。
不思議そうな顔をした、祭と視線が合う。
「何かあった?」
「…いや、別に?」
水都がいるということは、特に大したことでもない。一応ここ学校なんだし。
「ちょっと、水都が廊下にいるなんて珍しいなぁと思って」
ちょうど、水都は廊下の突き当たりまでたどり着いて。一番端のドアを開けた。資料室。何か授業で使うものでも取りに来たのだろうか。

「ふーん。まぁ水都先生は珍しいよねぇ」
「なんだよ?」
祭の言葉に何か含みがあるような気がして問いかける。

「いやぁ?空ってばすっごく真剣に長いこと見つめてたから好みの子でもいたのかな、と思って」

「はぁ!?好みってここ男子校だし!ってか何かそれオレの好みが水都っぽく聴こえるからヤメロ」
「だって、本当にずっと見てたんだよー?ねぇ、ナオくん」
今まで黙って、少し呆れた視線を送りながらもくもくと昼飯を食べていた藤守は、祭に声をかけられて口を開けた。
「うん。羽柴、バカみたいな顔してずっと凝視してた」

「なっバカって何だよ!?」
「だって本当にまぬけ顔だったんだもん」
「んだとぉ!?」

「はいはい。2人とも落ち着いて。ご飯食べるときくらい仲良くしようよ」
喧嘩を始めそうになったオレたちの間に割り込んで、祭が呆れながら言った。
「だって藤守が…」
「本当のことだし」

「はいはいはいはい。わかった、わかったから。とりあえず空は水都先生が大好き、ってことでこの話は終了!
それで今度のなんでも屋の依頼のことなんだけど」
なんて、勝手に話を終了させて違う話に持っていこうとする祭だけど。
「はぁ!?何わけわかんねぇまとめしてるんだよ!?オレは水都なんて嫌いだしっ!」
陰険で変態でエロくて腹が立って近づきたくない奴ナンバー1を独走状態の水都だ。
そんなまとめられ方されるのは勘弁したい。

だけど祭はさも当然の顔をして言ったんだ。
「…でも、」





「空ぁ?」
「うわっ!?な、何だよ、兄ちゃん」
いきなり兄ちゃんの顔が目の前にあってオレは本気で驚いた。
飲み物を取りに台所に行ってたのに、いつの間にきたんだ?

「何だよ、はこっちの台詞だろー?何かあったのか?」
ビールの缶を開けながら、兄ちゃんはソファに腰掛けた。ソファに座っている、オレの隣り。

「へ?何も?」
何でそんなことが問いかけられたのかわからなくて、少しまぬけな声で返してしまった。
ってかなんかその言葉に聞き覚えが。最近良く聴く言葉だ。

「そっか?あ、もしかして兄ちゃんのかっこよさに思わず見惚れちゃったとか?」
ニヤニヤと笑いながらビールを飲んだ。やっぱ風呂上りのビールは格別だねぇ!なんて幸せそうな顔で言って。

「……は!?何言ってんだよ!?」
いつ、オレが、見惚れたというのだ。見に覚えの無い言葉に少し呆気になる。

だけど兄ちゃんは相変わらずニヤニヤ笑って。
「だって、お前オレのことずっと見てたぜ?」
それはもう熱い熱い視線で。兄ちゃん照れちゃうー!なんてふざけながら言ってるけど。そこらへんを突っ込んでいる余裕はなかった。


兄ちゃんをずっと見てた?

いつ。誰が。
今、オレが?


何だか昼休みにも、そんなことがあったな、なんて驚きながらも思ってみる。
自分でも知らないうちに、兄ちゃんを目で追ってるらしい。



『よくわかんないけどいつも見つめちゃったり!』
元気な声が頭に響く。

その後に続いて響く、昼休みに言われた言葉。
『でも、空は真一郎さんのこと好きなんでしょ?』


好きだよ。兄ちゃんとして、いつも尊敬してるよ。
ああなりたいな、なんて、憧れてるよ。







恋なんて感情はわからない。ただ、慕ってるだけ。







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別名、書いたことないキャラをじゃんじゃん出そう企画。(何
祭ちゃん初登場ー!そして直は私が書くと何故か腹黒っぽくなっちゃうー!(何
でも今後真空以外のキャラを出せるか微妙なところ。(笑/ぇ
一応今のトコ出す予定ないなぁ…。出せて七海ちゃんかなぁ…。
どうにかして芥を出したい。どこかで出せないかなぁ…。