『テレビを消して』 オレの肩の頭を預けて寝ている奴を見下ろして、軽く溜息をついた。 「空の所為で全然ドラマ見れなかったじゃねぇか」 小声で呟きながらリモコンに手を伸ばしてテレビを消した。 楽しい、というわけでもないのだけれど、とりあえず続きが気になって毎週観ていたドラマ。 まさに今終わりに近づいていて最もいいところなんだけど、今回の話を見逃したし、もう続きを見ることはないだろう。 今日は平日なのに珍しく空が来た。 いつもならテレビなんか観ないで空にくっついているだろうけど、明日は平日だから。…何もしちゃいけない。始めたら絶対無理させそうだし…。 だから大人しくテレビをつけて、いつも観ていたドラマを観ていたんだけど。 風呂あがりの空が隣に座ってからというものの、気が気でない。 その色っぽさで隣りに座られるのは拷問に近いぞ、空…っ! 何とか今にも押し倒しそうな自分を押し殺して、いつも通りを装う。 …ドラマを観てた自分をこれほど悔やんだことはないぜ…。 途中でいきなり寝るために寝室に篭ることも出来ず、テレビの中では何だか告白シーンが始まってくる始末。 くそう…。テレビの中でこんなにイチャつきやがって!!オレだって今すぐ空を押し倒したいんだ! そんなオレの考えなど知らない空はオレの肩に頭のっけてくるし。 オレの中の天使と悪魔がオレを挟んで大喧嘩。 週末は…っ!と何とか堪え、空の髪を弄ることで何とか我慢していたら、空からのいきなりの告白。 そしてすぐに聴こえてきた規則正しい吐息。 …このときは本当に危なかったぜ…。寝てなかったら絶対押し倒してた……。 とりあえずベッドに運ぶか、と空を抱き上げる。 幸せそうに寝ちゃって…。 そんなに無防備だと兄ちゃん悪戯しちゃうぜー? 何て、思ってはみるものの実際には何も出来ない。…寂しいな…。 空の部屋に向かって歩いていたら、空がいきなり動いた。 僅かな、動きだけど。 「にぃ…ちゃぁ……」 そんな可愛い寝言を言いながら、オレの服の襟を握る。 空くーん?兄ちゃんのこと煽って楽しいー? 幸せそうに眠りやがって…。こっちは気が気でないっての。 くー!いつの間にこんなに可愛く色っぽく育ったんだろうなぁ、空の奴! 兄ちゃんとしては嬉しくもあり寂しくもあり辛くもあり色々大変だぞ! 何とか今にも空を食べそうな自分を抑え、ベッドまで運んだのだけど。 「空くーん」 小さく呼びかける。 起こしちゃいけないと思うけど。 「…放して欲しいなー?」 こんなところをつかまれたら、オレは本当に何も出来ないではないか。大人しく、自分の部屋で寝たいのだ。…何しでかすかわからないし…。 だけど、返ってくるのは幸せそうな寝顔と規則正しい吐息。 …あまりに幸せそうに寝てるから、毒気を抜かれたというか、何というか。 溜まっていた息を吐き出し、力を抜いた。 「…こんな顔されたら何も出来ないっての」 思わずこっちまで笑顔になってくる。 2人で入るには少し窮屈なベッドの中に潜り込んで、空を抱きしめた。 『兄ちゃん』 先ほどの言葉が頭の中で響く。 『…大好き』 思わずにやけてしまうのは、仕方が無いだろう。 「オレも」 空の唇に軽くキスを落とす。 「愛してるよ」 とんでもない殺し文句を言った直後幸せそうな夢の中にいった空に。 今更だけど、お返事を。 心地よい体温に眠気を誘われながら、抱きしめる腕に少し力を込めた。 これからも絶対放さないんだから、覚悟しとけよ? ―――――――― 兄ちゃんだって空が好きなのよ編(笑/何 |