『雪の夜』


夜、自室で眠っている時。
肌寒さを感じて、布団を引っ張り被りなおして、身体を丸くした。

……寒い?

疑問を感じて、ゆっくりと目を開ける。

見えたのは、窓の外で舞っている白い雪。



今日はメルトキオに居たので、俺の家に泊まった。
メルトキオ一大きい俺の屋敷だからと、一人で一部屋使っている。
それが好都合なのか、不都合なのか。
なんなんだろうな、と苦笑しながら彼の部屋のドアを静かに開けた。

一人部屋じゃなく、いつも通り皆で寝ていたら、人の気配に少し励まされただろう。
一人部屋だったから、心置きなく彼のもとへ行ける。

窓の外を見て、それからすぐに自室のベットから抜け出して彼の部屋に向かった。
極力音を立てないようにして、ドアを閉めて、ベットで横になってる彼に近づく。
こちらを向いて横になって眠っている彼の穏やかな顔に、少し強張っていた顔が緩む。

雪は、好きじゃない。


「ローイドくんっ!」
名前を呼びながら、布団に潜り込んで、彼を抱きしめる。
彼だって旅慣れた剣士だ。どうせ気配に気づいて起きるだろうから、それならばと自ら自分がきたことを示す。
「んー……」
眠そうな声をあげながら、ロイドが少し動く。
だけど、抱きしめている所為で、あまり大きな動きは出来ない。

「なんだよぉ…っておわ!?」
目を開けたらしいロイドが、驚いた声をあげる。

「何でお前ここにいんだよ!?」
「んー、何か寒くてぇー。ロイドくん温めてぇー」
「あー…もうくっつくなー…」
驚いて目が覚めたかと思ったけれど、やっぱり眠たいらしく、声に力は入っていない。

「そんな寂しいこと言わないでよー」
抱きついてすりすりと頬をすれば、煩わしがるようにロイドは身体を回転させて、俺とは反対方向を向いた。
酷い。恋人に対してそんな反応はあんまりじゃないんですか。

「ロイドくんひどーい」
「あーもう、静かにしろよ……」
言った途端、ロイドの身体が少し強張る。ああ、きっと窓の外を見たんだろう。ロイドが身体を向けた先にある、少し曇った窓。

そして、身体を元に戻して、俺のほうを向く。

「……あんまり、締めつけるなよ」

ここに居てもいいのだと、態度で示してくれて、嬉しくて顔が綻ぶ。
「りょーかいっ」

嬉しくて、言われているのにまた抱きしめてしまう。
「ロイドくん大好きー!」
「あー!だから締めるなってば」
苦しいんだよ、と文句を言われて、少し腕の力を抜く。
ロイドは頭の下に回っている俺の腕の眠りやすい位置を探して、そして瞳を閉じた。寝る準備は万端らしい。

「ロイドくんはー?」
眠りに入ろうとしている彼に、これだけは聞いておきたい。いつも聞いているし、この態度からして嫌われてるなんて、思わないけれど。
雪の所為でこんなに弱気になっているのかねぇと、心の中で苦笑する。
もう、彼は眠ってしまっただろうか。
返事がなくて、仕方ないかな、なんて思いながら俺も瞳を閉じる。

「……生まれてきてくれて、有難う」

思わず息を呑む。
何てことを、言ってくれているのだろう。

「ロイ……」
「大好きだよ!おやすみっ」
ロイドはそう言って、布団を引っ張って眠る体勢を取った。

俺なんて、嬉しくて思わず涙が零れそうで困っているというのに。

ああもう、本当に、大好きだよ。


「…有難う、おやすみ」
彼の額に、小さくキスを落とす。
びくっと反応したけれど、ロイドは強く目を閉じている。顔はほのかに熱を持っていて、きっと紅く染まっているのだろう。

嬉しくて、幸せで。腕の中の温もりが、とても愛おしい。
あったかいなぁ、なんて思いながら、俺は眠りに落ちた。







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ゼロスの屋敷に部屋2個しかなかったかもしれないですけど、そこら辺は触れない方向で。(笑)
ってかメモトキオ一大きいんだから、人数分くらい部屋がきっとどこからあるんですよ…っ!(グッ