分かってる。
白石はテニス部の部長で、部を纏めるために色々仕事をしていて、忙しいってこと。
今だって、後輩のプレーを真剣に見ている。…俺が、近くにいるのに。

最近あまり2人きりでいることがない。
白石は部長の仕事で、俺はお笑いライブの準備で、なかなか都合が合わないのだ。
仕方がないことだっていうことは、分かってる。忙しい白石の負担にはなりたくないから、我侭は言いたくない。
分かってるけど、…寂しいものは寂しい。

「ユウジ?」
思わず落ち込んで足元を見ていたら、声をかけられた。
あかん、名前呼ばれただけで、嬉しい。気にかけてくれたことが、嬉しい。

「どないしたん?疲れた?」
ずっとベンチに座り込んでいたから、バテたと思われたのだろうか。
まぁ確かにここ最近少し寝不足な日が続いて、身体が少し重かったから休憩していたのだが。
…少し休憩のはずが、思わず白石を眺めてぼんやりしてしまっていたのだけど。
「大丈夫やで」
そう答えて立ち上がる。心配をかけたいわけではないのだ。
「ほんまに?最近ユウジ忙しいんやから、無理したらあかんで?」
「大丈夫やって!白石こそ忙しいやんか。無理はあかんでぇー?」
茶化すようにそう言えば、白石の左手が俺の頭に触れた。髪を撫でられる。

「んー。でも本当のところ、ユウジ不足でめちゃくちゃ苦しい」
「…っなに言うとんねんいきなり」
真顔で言われたから、驚きと恥ずかしさで、凄く慌ててしまった。
睨みつけても、白石は爽やかに笑うばかり。

「最近全然イチャイチャしてないやん」
「何真顔で恥ずかしいこと言うとんねん」
「ユウジに全然触れてなくて俺ほんまに死にそうやわ」
まぁ、とりあえずはライブが終わるまでの我慢やな。

そう言いながら笑った顔が、少し寂しそうで。
胸が締め付けられる。
…俺だって寂しいっちゅーねん。白石と一緒にいたい。白石に触りたい。


「とにかく、あんまり無理するんやないで?」
ポンと俺の頭を軽く叩いて、白石の手が離れる。それと同時に離れていく黄色と緑のジャージ。
寂しい、寂しい。


「…ユウジ?」
「え?…あ、」
呼ばれて気づく。無意識に白石のジャージの裾を掴んで、白石を引き止めていた。
あかん。駄目や、白石に迷惑かけたらあかん。

「す、すまん!何でもないで…!」
慌てて手を離したら、その手をいきなり掴まれた。

「うわ、ちょ、白石?」
「……あかん。我慢できん」
「え?何…?」
「ユウジ忙しいから我慢しとったけど、もう無理やわ」
「は?」
「今すぐって言いたいところやけど、流石に部活中やからそこは我慢するわ。でもそれ以上は待てへん」
「いや、ちょお、待てや…っ」
「…ユウジは、嫌なん?」
なんやねんそれ。そう聞かれたら答えなんてひとつしかないのに。
「嫌やないけど…」
「でもほんまにユウジが無理なら我慢するで。ユウジが決めてや」
真っ直ぐに見つめながら言うから。

「…卑怯や」
俺やって、我慢しとったのに。
もう、我慢出来るわけがない。

「俺も、蔵に触りたい」

「…あかんやろ!」
「は?」
「もう我慢できんわ。部活終わってからなんて悠長なこと言ってられへん!」
「いやそこは我慢しようや」
「ユウジ好きやー!」
「うわ、抱きつくな!」

部員たちの視線が痛くて仕方がない。確かにいつも小春とホモネタやってるけど、それとこれとは違うし!
ああもう恥ずかしいから好きや好きや叫ぶなや!




「今日は手、繋いで一緒に帰ろうな」
「…分かったからとりあえず真面目に部活してや」



そう呆れながら言うけれど、口元が緩んでしまうのは仕方がない。
俺だって、我慢の限界だったんや。


とりあえず、家に着いたら力強く抱きしめて、いっぱいキスしてや。
そうしたら、もう離さへんで?








『だからあともう少し、我慢して?』