ここは放課後の教室で。
幸い今は誰もいないけれど、廊下からも人がいる気配はいないけれど。
いつ誰が通るかもしれないそんな場所にもかかわらず。
なんで、俺は白石に抱きしめられとるんやろか。

「白石、」
そう呼びかけながら白石の左腕に手を添えたら、より一層強く抱きしめられた。
正直、苦しい。

「白石、」
呼びかけるけれど、腕は緩まることはなく。
思わず溜息をつきたくなる。もうどれくらいの時間この状態なのだろうか。
窓の外からは聞き覚えのある声が聞こえてくる。テニス部は、もう始まっているのだろう。
お前部長の癖にサボりか。

仕方なく思いながらそのまま大人しく抱きしめられていたら、小さな声がした。
「ユウジ」
「…白石、どないしたん?」
白石の声が泣きそうで、少し驚きながら白石の背中を擦れば、もう一度名前を呼ばれた。

「ユウジ、」
「何かあったん?」
「ユウジ、傍におって」
そう懇願する声が震えていて、なんだか、不思議な気分。

「俺が白石から離れるわけないやろ?」
「ユウジ」
「ここにちゃんとおるから」
「どこにも行かんといて」
「大丈夫やって」

何や怖い夢でも見たんか?
いつもは余裕たっぷりに白石の、子供みたいな態度が少し、面白くてつい笑ってしまう。
なんか子供あやしとる親みたいな気分やなー。

「ユウジ、」
「うん?」
やっと腕が緩まって、身体が少し離れた。
ようやく白石の顔が見れたことに少しだけ安堵したのも束の間、いきなり顔が近づいてきてびっくりした。

だから、ここ、教室…!

誰が見るかも分からないそんな場所でいきなりキスされて、少し焦ったが何だか拒否出来る雰囲気でもないので仕方なくされるがままになっておく。
これ、ほんまに誰か見たらどないしよ。
俺は別にお笑いのイメージがあるからなんとか誤魔化せるかもしれないが、白石は困るんちゃう?
一応女子にモテモテの爽やかキャラなんやろ。
あーでも白石なら上手いこと誤魔化せるか。

なんて色々考えてる自分に心の中で少しだけ溜息をついて、白石の頭に手を乗せた。
軽く撫でる。
白石は何が不安なん?
俺から離れていくことなんて、ありえないのに。
どうしたら、白石は安心してくれるんかな。

とりあえず、離れていく白石の首に抱きついて、今度は俺からキスをしてやった。




俺は、こんなにも白石が好きなんやで!






『だから、そんな泣きそうな顔しないで』









―――
しっとりしたのが書きたいと思っていたのになんかよくわかんないテンションになってしまいました。あるぇー?