学校では色んな人に祝って貰って、部活ではパーティなんてものも開いてもらって。
凄く、凄く嬉しいのだが、…一つ、不満がある。

学校からの帰り道。2人並んで歩く、いつも通りの帰り道。
隣でニコニコ笑いながら楽しそうに世間話をしてくる白石をチラっと見上げた。
そんな話する前に、一言言ってくれてもええんとちゃう?

「ユウジ?」
思わず俺が溜息をついてしまったら、白石が首を傾げながら呼びかけてきた。
「どないしたん?疲れたん?今日はいっぱい騒いだからな」
「…疲れてへん。別にあれくらい平気やし」
思わず口を尖らせながらそう答えたけれど、白石は納得いっていないようで。

「プレゼントもいっぱい貰ったから重いんやろ?半分持とか?」
そう言って手を伸ばしてくるから、俺は益々不機嫌になる。

「平気やし!」
そう答えて白石から顔を逸らした。
「ユウジ?」
なんやねん。わざとなんか。分かっててそんな態度取るんか。

「…何で、言ってくれへんの?」
このまま放っておくと、本当に言ってくれなさそうで。それはとても、寂しくて。
そんなことを考えたら少し落ち込んでしまった。
別にプレゼントが欲しいとか、何かして欲しいとか、そういうわけではなくて。
ただ、一言、言って欲しいだけなのに。

「何が?」
そうとぼけて聞いてくるのが、寂しくて。

「おめでとうって、何で言うてくれへんの?メールもあらへんし、学校で逢っても言ってくれないし、パーティの時も離れて笑ってただけやん!」
悔しい。今日一日、ずっと待っていたことが、期待していたことが、悔しい。
日付が変わってから、凄く待っていたのに。

もう白石なんか知らん。期待するだけ阿呆やったわ。所詮ただの毒手エクスタ男だったちゅーことやろ。

「もうええわ。我侭言うてごめんな」
そう言ってとっととここから去ろうと身体の向きを変えようとしたら、いきなり腕を引っ張られた。
当然俺はバランスを崩して白石に倒れこむ。

抱きしめられて、耳元で囁かれた。
「生まれてきてくれて、有難うユウジ」
「…っ」
「お誕生日おめでとう、ユウジ」
「…遅いっちゅーねん!」
あかん。やぱい。嬉しくて、涙出そう。
思わず白石の胸に顔を押し付けて、自ら白石に抱きついた。
そんな俺をあやす様に、背中を軽く撫でながら言った。 

「ユウジ人気者やから、今までは皆に祝って貰う時間やってん」
「なに…?」
「今からは、俺が独占するで。俺かて今日一日我慢しとったんや」
「……はぁ?」

何を突然言っているのだろうか。
皆に祝ってもらう時間ってなんやねん。

「ユウジ、今日は俺のところに泊まりやから」
「は?何勝手に決めとんねん」
「来ないん?」
「……行く、けど」

なんやねん。ちょー待てや。
話がどんどん進んで、俺はついていくのにいっぱいいっぱい。
何でそんなに生き生きしとんねん、白石。

「今から俺がいっぱい祝うで。たっぷり可愛がったるから覚悟しときや」
身体が離れたと思ったら手をつながれて、そのまま引っ張られる。
驚きと、恥ずかしさで、少し足元がふらつきながら、白石についていった。


「ほんまにおめでとう、ユウジ」
そう言ってくれた時の笑顔が、凄く嬉しくて。

「有難う、白石」
凄く、凄く嬉しい。
とても、幸せ。



白石の家は、もう少し。





『おめでとう!』





―――
ユウジハピバー!!!!