先輩先輩先輩。
口の中で呟いて、なんだか腹立たしくなった。

「先輩」
「ん、なんや?」
思わず口に出して呼んでみれば、普通に振り返るユウジ先輩。
そりゃあ、呼んだのだから、振り返るのは当たり前なのだけど。

「…先輩が俺より年上なんて、ほんま有り得ないっスわ」
「はぁ?なんやねんいきなり」
少し苛つきながらそう言えば、凄く間抜けな顔で返された。ほら、そういうところだって。
「先輩、子供っぽいし」
「誰がやねん!」
「アホやし」
「お前な…!」
「口を開けば小春小春ぅーやし」
「え、なんやねん今の。俺のモノマネ?」
「すぐ泣くし喚くし煩いし」
「さっきから何やねん馬鹿にしとんのか!?」
キー!と地団駄を踏んで憤る先輩。こんな子どもっぽい行動をする人が、俺の年上なんて。

「悔しい」
「はぁ?」
「何で俺より年上なん?」
「はぁ?そら俺が早く生まれて来たからやろ?」
「何で、」

俺は年下なん?

悔しい。そして、ユウジ先輩と同い年な人が、羨ましい。
同じ学年やったらいいのに。一緒に勉強して、一緒に修学旅行行って、一緒に部活引退して、一緒に卒業出来るのに。

「…お前、寂しいんか?」
「はっ何でそんなこと思わなあかんスか」
「ホンマ可愛くないなー!」
「可愛く思われたくないんでええっスわ」
「面倒くさいやっちゃなー」
そう溜息を吐きながら言うけれど、でも顔は凄く笑っていて。何やねん、何がそんなにおもろいねん。
俺が不快感をそのまま出して睨みつければ、先輩は俺の頭に手を乗せた。そのまま、乱暴に俺の頭を撫で回す。

「ちょ、何すんねん!」
折角セットした髪が台無しだし、何よりも子ども扱いされていることが気に食わない。
「遊びに来たるから」
「どこに」
「部活、引退しても来るから。光が寂しいっていうならいつでも来たる」
「さっきからなんなんスか。馬鹿にしとるんですか」
「それはさっきのお前やろー!」
大きく笑いながら、また俺の頭をぐちゃぐちゃにする。
せやから、子ども扱い、すんな!

「光が逢いたいならいつでも逢いに行くから。寂しいなら一緒に居るから。大丈夫やで」
「…何、言うとんのですか」
「大人になったら1個くらいの歳の差なんて関係ないて」
「…なんスか。大人になるまで一緒に居ってくれるんですか」
「大人になっても、や!ずっと傍に居ったる」

そう言いながら向けられた笑顔があまりにも眩しくて、目が眩んでしまいそうになる。
悔しいけど、認めたくないけど、やっぱりこの人は俺より年上なんだな、と思う。
この人には敵わない。いつもは子どもっぽいくせに、肝心なところでは頼りになる、ユウジ先輩。


いつか、この人を支えられるような、そんな大人になりたい。
歳の差は埋められないけれど、この人を包み込める存在になりたい。
今はユウジ先輩の優しさに包み込まれているけれど、いつか、いつかは。



「とりあえず、身長を抜かすところからいくんで」
「はぁ?俺かてまだ伸びるわ!」
















『その差はとても大きい』


















なんやかんやで大人なユウジな財ユウが好きです。財前には申し訳ないがいつまでも精神的にユウジが支えてあげてればいい。