頭に、違和感を感じて目がさめた。
いつもと違う、感覚。


「……っ」
目を開くと同時に白石の顔のアップで少し驚いた。
彼と向かえる朝はもう何度目かわからない程だけど、今でもこの瞬間は慣れない。
目を覚ました直後は、なんだか恥ずかしいのだ。
そもそもなんでこんなにも近くにいるのだ、と気恥ずかしさを誤魔化すため心の中で不満を呟いた。
そこで気づく、先ほどの違和感の正体。

白石の右腕が、自分の頭の下にあった。

これは所謂、腕枕というやつだろうか。いや、これは間違いなく腕枕だ。

…腕、痺れるやん。
いつもは嫌だと断ってきたが、昨日はあまりにも眠くてすぐに眠りについてしまった。
その為断ることが出来なかったのだろう。
腕枕という行為は別に嫌ではない。確かに白石の近くにいれるし、…それは少し恥ずかしいけれど、それでも嬉しい。
けれども、一晩中自分の頭を乗せていたら、疲れるに決まっている。

その腕を退けようと思って、身体を起こそうとしたが、いきなり白石の左腕が俺の身体の上に覆い被さってきて、そのまま抱きしめられた。

「ちょお…、白石!」
驚いて彼の名前を呼ぶけれど、返ってくるのは規則の正しい吐息だけ。
けれども。

「…お前、起きとるんやろ」
断定口調でそう言えば、抱きしめる腕に力が少し加わった。
「……まだ寝とる」
「起きとるやんけ」
「まだ起きるには早いで、ユウジ」
確かに部屋の中はまだ薄暗くて、いつもなら寝ている時間だろう。確かに俺もまだ寝たりない。すぐに再び眠ることは可能だろう。
白石はこのまま再び眠りにつこうとするけれど、俺はそれでは困るのだ。

「とりあえず離せや」
「嫌や」
「お前…これじゃ寝難いやろ?」
「ユウジ暖かくて気持ちええから寝やすいわ。ええ夢見れそう」
「阿呆か。いいから離せや」
そう言ったら、今まで気だるげだった白石が、少しだけ雰囲気を変えた。
「…何で?」
そう問い掛けてくる声が、あまりにも淡々としていて。感情が読めない。
怒っているのか、悲しんでいるのか。…多分、両方だろう。

「下の腕、退いてや」
少しだけ、優しくそう言えば、
「嫌や」
即答された。なんやねん生意気やぞ。
「子供やないんやから」
「…俺が腕枕したい言うとるんやからユウジは大人しく寝ときや」
そう言いながら、左手で俺の前髪に触れた。目にかかっていた前髪を避けられて、白石の顔が見やすくなる。
真っ直ぐ見つめてくる瞳に、思わず恥ずかしくなった。

「せ、せやかて、腕痺れるやん」
「大丈夫やて」
「お、重いやん」
「なんともないて。ええから早く寝とき」
そう言いながら白石は俺の右目の瞼に軽くキスをした。思わず両目を瞑れば、近くで白石に囁かれる。

「お休み、ユウジ」

ああ俺このまま流されるんやな。
白石の腕は心配だが、彼が避ける気は全くないし、それに本人が大丈夫だと言うのならそれでもいい気がしてきた。
「朝起きて腕痺れてても知らんで」
「かまへんよ」

…別に、腕枕というものはそこまで嫌ではないのだ。
目を閉じれば近くに白石の体温を感じて、凄く安心した。それと同時に眠気が襲ってくる。

「お休み、……蔵ノ介」
普段はあまり呼ばない下の名前で彼を呼べば、彼の左腕が再び俺を抱きしめた。


そんな彼の腕がとても気持ちよくて。
白石の体温を感じながら、俺は意識を手放した。







『少しでも君の近くにいたいんだ』






――
白石のキャラが掴めてないです(爆